学位記

滝澤修の学位論文

学位

大阪大学 博士(工学)

(取得年月日:1997年3月18日,学位記番号:第12872号)

論文題目

日本語修辞表現の工学的解析

審査委員

主査  溝口 理一郎 教授 (大阪大学 産業科学研究所)
副査  豊田 順一  教授 (大阪大学 産業科学研究所)
副査  北橋 忠宏  教授 (大阪大学 産業科学研究所)
副査  西尾 章治郎 教授 (大阪大学 工学研究科情報システム工学専攻)

学位論文要旨

 自然言語では、深い意味あるいは感情を伝えるため、凝った言い回しである「修辞」が多く用いられる。そのため、修辞の工学的解析、すなわち数値処理を伴うアルゴリズムを用いた修辞解析手法の研究は、自然言語処理技術および感性情報処理技術の高度化に向けた基礎研究として重要である。本論文は、日本語修辞の中の「伝達のレトリック」に分類される「詞喩」、「アイロニー」、「トートロジー」の3表現(以下「対象3表現」と呼ぶ)について、工学的検出手法および理解モデルを提案した。
 本論文ではまず第1章において、修辞の工学的解析の定義と必要性について述べた。
 第2章では、対象3表現が日本語修辞の中で占める位置について述べ、研究対象とした理由を述べた。また、対象3表現の工学的解析を行う意義を述べ、本研究が扱う範囲を示し、関連研究について検討した。
 第3章では、詞喩表現の工学的検出手法を提案した。まず詞喩を、音韻、形態、意味、の3つの観点から分析し、工学的解析に必要な知見を得た結果について述べた。そして、詞喩を「地口」と「洒落」に分類し、それぞれの検出手法を提案した。さらに両検出手法の評価のために、複数の例を用いて動作確認を行い、問題点を明らかにした。
 第4章では、アイロニー表現の検出手法と理解モデルを提案した。まず検出手法に関して、アイロニー表現の実例を収集・分析して得られた特徴に基づき、格フレーム型に形式化した状況と発話とを入力とし、入力の「アイロニー度」を算出する機構を提案した。そして本検出手法の評価のために、複数の例による動作確認を行い、問題点を明らかにした。次に、アイロニーの理解モデルとして、発話者が伝えようとする評価値を聞き手が計算するアルゴリズムを提案した。そして本モデルを用いて、アイロニーが聞き手の反論を阻止する機能をもち、それによってアイロニー表現がもたらす効果を説明できることを示した。
 第5章では、トートロジー表現の理解モデルを提案した。本モデルでは、概念がもつ属性の典型性を表す尺度である「顕現性」(salience)を適用して、その値が変化することをトートロジー理解と定義した。本モデルを用い、反復語が指示する概念に依存して、強調される属性が変化することなど、トートロジー表現に特有な一部の特徴を表現できることを示した。
 最後に第6章では、全体のまとめと今後の課題について述べた。

本博士論文は、国立国会図書館で閲覧できますが(本論文の書誌情報はこちら)、99.9%同じ内容の論文(謝辞以外は一字一句同じ)が、通信総合研究所季報, Vol.44, No.4, pp.183-219, 1998 に掲載されていますので、ご参照下さい。電気通信、電波科学、地球物理学系の大学図書館で購読されています。

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