KARC Front(1995年3月号 No.19)

恐怖の体験

王鎮

 恐怖、衝撃の瞬間から、一ヶ月半を経過しようとしています。親族、友人や家 などを失い、辛い避難生活を送らなければならない人々に比べて私たちは非常に 幸運ですが、その日その瞬間の恐怖感は一生忘れません。
 1月17日、東京へ出張のため6時半に起きる予定でしたが、強い横揺れで目 覚めました。何が起こったかわからない内に、ベッドを持ち上げたような強烈な 縦振動で、地震であることがやっとわかりました。何かしようと思ったが、頭が 真っ白で何をすればいいか全くわかりませんでした。そして、頭の上に大きなも のの倒れた音と、あちこち家具が倒れた音が聞こえて、起きようとしましたが頭 が何かにぶつかって起きれませんでした。強い振動が長く続いて、「早く終われ! 」と心の底で叫びました。振動が収まった後、家族の安否を声で確認し、手を伸 ばしたら、頭の上に倒れていたのは2枚の引き戸であることがわかりました。暗 闇の中で余震が次々に来て、怖くて家にいられない。外へ出ようとしたが、服が 倒れた引き戸の下敷きになって取れなく、引き戸を持ち上げようとしたが全然動 きませんでした。仕方なく引き戸の上に登ったら、子供部屋においたピアノが2 枚の引き戸を破って倒れたことがわかりました。畳の上で寝てたら、ピアノの下 敷きになったことは間違いないと思うと身が震えてしまいました。
 着の身着のままで外に出たら、不気味な灰色の空から黒い灰が混じった小雪が 降っておりとても寒かった。消防車や救急車のサイレンが連続不断で更に身が締 まりました。隣の方から懐中電灯を借り、家に戻って家族全員の厚着と車の鍵を 探し出し、8時半まで車中でラジオを聴いていました。しかし、周りの人たちが パニックにならず、静かに行動を取っていることにとても感心しました。
 私たちは地震を体験したことがなくて、家の中の地震対策を全く考えなったの で家具がほぼ全部倒れましたが、ピアノがストッパーから弾み出されて倒れたこ とは今回の地震の縦振動の強さを物語っています。そして、ライフラインや交通、 有線通信システムなど一瞬の内に全て寸断されたことは、大自然災害に直面した ときの現代都市の脆さと人間の無力さを強く感じさせました。しかし、私たち人 間は大自然災害と闘いながら生き残ったものですから負けることはありません。
 最後に、家族が避難時お世話になった研究室の方々と管理課の方々に感謝いた します。また、阪神大震災で犠牲になった方々のご冥福と神戸の早期復興を心か ら祈ります。
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